財産分与・年金分割

財産分与

離婚に際して避けて通れないのがお金の問題です。

新しい生活を安心してスタートさせるために、財産分与の仕組みと注意点を正しく理解しておきましょう。

財産分与とは

財産分与とは、離婚する際に、夫婦が結婚生活の中で協力して築き上げた財産を公平に分配することをいいます。

通常は離婚する前に取り決めますが、離婚後であっても請求することは可能です。ただし、請求には期限(除斥期間)があるため注意が必要です。原則として離婚から2年以内となります。

※法改正により「5年」に延長される予定ですが、現時点では、2年となっています。

財産分与の対象には、預貯金だけでなく、不動産、有価証券、保険(解約返戻金)、自動車、退職金などが含まれます。

財産分与の対象とならない財産 ~特有財産~

結婚前に蓄えた預貯金や、結婚前または結婚中に相続や贈与によって得た財産は、夫婦の協力とは無関係に得たものとして「特有財産」と呼ばれます。

これらは財産分与の対象にはなりません。

そのため、財産分与の計算にあたっては、特有財産の有無を調べ、対象から除外する必要があります。

【特有財産の代表例】

独身時代の預貯金・有価証券 (自分の名義であり、独身時代のものであると明確に区別できる必要があります)

嫁入り道具、結婚前に購入した家具・家電

結婚後に相続・贈与で得たお金、不動産、動産 (特有財産であることは、主張する側が立証する必要があります)

【具体例】

夫名義の財産が合計1,000万円、妻名義の財産が合計700万円あったとします。
この事例で、妻が父から500万円の贈与を受けていたとしましょう。
この500万円は、結婚生活とは無関係に形成された特有財産ですので、対象財産から除外します。
すると、財産分与の対象となる財産は、1,200万円(1,000万円+700万円ー500万円)となります。

  • 夫名義の財産:1,000万円

  • 妻名義の財産:700万円(うち500万円は父からの贈与)

  • 分与対象財産:1,000万円 + 700万円 – 500万円 = 1,200万円

財産分与のルール(2分の1ルール)

不動産や預貯金など、自分名義のものは離婚後も自分のものだと考えがちです。

しかし、名義だけで判断すると財産が一方に偏り、公平な清算になりません。

財産分与は「夫婦それぞれの財産形成に対する貢献度」で決まります。

現在の裁判実務では、特段の事情がない限り、夫婦の貢献度は平等であるとされており、結婚後に築いた財産に対しては相互に2分の1の権利を有すると考えられています。

これを「2分の1ルール」といいます。

【2分の1ルールの適用例】

先ほどの例(財産分与の対象財産1,200万円)では、夫婦それぞれが600万円ずつの権利を持ちます。

現状、夫が1,000万円、妻が200万円を保有しているため、妻は夫に対して「差額の400万円」を財産分与として請求できることになります。

  夫名義 妻名義 合計
全財産 1,000万円 700万円 1,700万円
特有財産 0円 500万円 500万円

分与対象財産

1,000万円 200万円 1,200万円

2分の1の権利

600万円 600万円 1,200万円
財産分与

夫から妻へ400万円支払う

財産分与の方法

共有財産を2分の1にする際、どのように分けるべきでしょうか。

現金や預貯金だけであれば送金するだけで済みますが、実際には不動産、保険、自動車などが混在しているケースがほとんどです。

その場合は、最終的に取得額が半分ずつになるよう調整を行います。

【具体例】

夫名義の財産

1,000万円(内訳:預貯金500万円、生命保険(解約返戻金見込額)300万円、株式100万円、自動車100万円)

妻名義の財産

200万円(内訳:預貯金150万円、生命保険(解約返戻金見込額)50万円)

妻が夫名義の自動車と残りは預貯金を希望し、夫もそれに応じる場合、夫から妻へ300万円を送金し、自動車の名義を妻へ変更することで、最終的な財産分与の取得額が600万円(2分の1)となります。

離婚時に別居している場合 ~基準時~

離婚成立前に別居するケースは多くあります。

別居期間が長くなると、その間の夫婦の財産が増えたり減ったりすることがあります。

この場合、いつの時点を基準として財産分与の対象財産を確定すべきかという問題があります。

現在の実務では、原則として「別居時」を基準に財産を確定させます。

別居後は夫婦の経済的協力関係がなくなると考えられるためです。

【具体例】

別居時に夫名義の預貯金が1,000万円あったが、夫が浪費して離婚時には200万円しかない場合

この場合でも、別居時の「1,000万円」を対象財産とします。

したがって、妻は夫に対し、2分の1である500万円を請求することが可能です。

不動産を所有している場合

住宅ローンがある場合

自宅不動産に住宅ローンが残っている場合、財産分与は複雑になります。

特に問題となるのは、不動産の評価と分与方法です。

不動産の評価

不動産は、時価から住宅ローン残高を控除して算出します。

夫名義の財産が、自宅不動産(時価2,000万円、住宅ローン残高1,000万円)であった場合

不動産の価値は、「時価 - 住宅ローン残高」で算出しますので、自宅の価値は1,000万円となります。

仮に、夫が自宅を取得する場合、妻は夫から500万円の財産分与を受けることとなります。

2,000万円ー1,000万円=1,000万円

1,000万円×1/2=500万円

ここでポイントとなるのは、時価を適切に評価するということです。

この事例で、もし、時価が1,500万円の場合、夫から妻への財産分与は250万円となります。

2,000万円ー1,000万円=500万円

500万円×1/2=250万円

反対に、もし、時価が2,500万円の場合、夫から妻への財産分与は750万円となります。

2,500万円ー1,000万円=1,500万円

1,500万円×1/2=750万円

不動産の

時価

住宅ローン

不動産の

価値

妻への

分与額

1,500万円  1,000万円 500万円 250万円
2,000万円 1,000万円 1,000万円 500万円
2,500万円 1,000万円  1,500万円  750万円

なぜこのようなことがおこるのでしょうか。

それは自宅の時価の算定が難しいからです。

物件にもよりますが、不動産相場は流動的です。

また、相手方が自分に有利な時価を提示することもあります。というのは、不動産業者がある程度は依頼者の希望に沿った価格で査定することがあるからです。

上記の例でいえば、妻が自宅の時価を高く査定すれば妻側に有利となりますし、夫が自宅の時価を低く査定すれば夫側に有利となります。

このように、不動産が実際の価格と異なる査定がされた場合、不利益を被るので、適正に査定することが重要なポイントとなります。

💡当事務所では、不動産の査定が必要となることが多いため、不動産業者と提携しており、依頼者が不利益を被らないよう適正かつ迅速に査定を行うよう努めています。

 

住宅ローンがある不動産の分与方法

自宅などの不動産の財産分与は、大きく分けて次の3つの方法が考えられます。

① 夫が自宅を取得する

② 妻が自宅を取得する

③ 売却する

① 夫が自宅を取得する場合

自宅も住宅ローンも夫名義で、自宅の時価2,000万円、住宅ローン残高1,000万円(その他の財産なし)の場合、夫は妻に対して、1,000万円の2分の1である500万円を分与することになります。

これに対し、ローン残高が不動産の時価を上回っている場合(これを「オーバーローン」といいます)、妻の財産分与請求権は発生しません。

住宅ローンについては、離婚後も、不動産を取得する夫が負担することになります。

② 妻が自宅を取得する場合

自宅も住宅ローンも夫名義で、自宅の時価2,000万円、住宅ローン残高1,000万円(その他の財産なし)の場合、妻は夫に対して、1,000万円の2分の1である500万円を支払って、自宅不動産の名義を取得することになります。

これに対し、住宅ローン残高が不動産の時価を上回っているオーバーローンの場合、夫の財産分与請求権はありません。

離婚後の住宅ローンについては、不動産を取得する妻が負担すべきことになります。

妻が自宅を取得する上で問題となるのは、住宅ローンの債務者が夫名義である場合です。
離婚しても、銀行に対する債務者は夫のままです。
夫婦の離婚の問題と銀行等の債権者に対する問題は分けて考える必要があります。

このような場合、夫から妻へ債務者の変更を銀行が認めてくれればよいのですが、そう簡単ではありません。
夫婦のうち、収入が多い方が債務者である方が債権回収の可能性が高いので、妻にも相当の収入があるなどの事情がない限り、債務者の変更は基本的には認めてくれません。

妻が、別の銀行等で住宅ローンを借り入れ夫の住宅ローン一括返済することや、妻の親族等による援助で住宅ローンを完済することもできない場合は、離婚時に自宅の所有権を取得することは難しくなります。

妻が住宅ローンの債務者となることができない場合、銀行等に対する債務者は夫のままにしておき、妻が夫に毎月の住宅ローンを支払うなどの約束をして自宅の所有権を分与してもらうなどの方法が考えられます。

しかし、日本の家庭では、年齢が高くなるほど、妻の多くは専業主婦であったり、就労していてもパートタイマーであったりなど、収入が低いケースが多い状況です。
このような現状からすると、不動産の時価が住宅ローン残高を上回るオーバーローンの場合に、妻が評価額の半分を夫に支払うのは難しいケースが多いです。
また、妻が離婚後、住宅ローンを支払っていくことも簡単ではありません。

このような場合、話し合いが可能であれば、柔軟な解決もあり得ます。

例えば、夫が強く離婚を希望しており、妻が離婚に消極的な場合、2分の1ルールではなく、夫に負担を大きくしてもらうなどです。
具体的には、妻が自宅を取得し、夫に評価額の半分を諦めてもらう、離婚後も住宅ローンを支払ってもらう方法が考えられます。

その他、夫が自宅を取得し、妻には離婚後、賃貸や使用貸借(無償で自宅を使わせること)で居住を継続する方法もあります。

③ 売却する場合

売却代金を2人で分ければよいので、それほど複雑ではありません。
問題となるのは、そもそも売却できるかということです。

住宅ローン残高が不動産の時価を上回っているオーバーローンの場合、自宅を売却する際、債権者である銀行等の承諾が必要です。

銀行等の債権者にとって最も重要なことは、債権の回収可能性です。

そこで、住宅ローンを組むとき、不動産に抵当権を設定します。

そして、貸付の際、契約書には、担保価値を毀損するおそれがある行為(自宅の売却などの処分)については、銀行等が承諾しない限り認めない旨の条項が記載されています。

オーバーローン物件の売却には、銀行等との交渉が必要となります。

当事務所では、オーバーローン物件の売却を多く扱う不動産業者と提携しています。

不動産の登記名義

不動産の財産分与は、不動産の所有権をどうするかという問題です。

この所有権は権利であって目には見えません。

そこで、取引の安全の観点から第三者にも明確にするために、不動産については、所有者が誰であるかなどの情報を法務局で登記することになっています。

離婚の財産分与でも、登記できる状態であれば、登記をすべきです。

そうしないと、万一、夫が第三者に自宅を売却し、名義変更した場合、妻は、その第三者に自分が所有者であることを主張できないおそれがあるからです。

不動産の名義変更で注意が必要なのは、住宅ローンが残っている場合、債権者である銀行等の承諾がなければ名義変更ができない場合が多いということです。

したがって、このような場合、夫との合意(離婚協議書)の中で、住宅ローンを完済後、直ちに名義変更するという内容の条項をもうけておくことが考えられます。

なお、銀行等によっては、住宅ローン残高がある場合に名義変更は認めなくても、仮登記を認める場合があります。

仮登記は、本登記するための要件が備わっていない場合に、将来の本登記の順位保全のためあらかじめする登記のことです。

住宅ローンが残っていてすぐに名義変更ができない場合は、将来の本登記の順位を保全するための「仮登記」を行うなどの対策を検討すべきです。

財産分与に関する弁護士のサポート

財産分与ひとつとっても、相談者ごとに状況は異なります。

妻は自宅の取得や自宅での居住継続を希望し、住宅ローンを負っている夫は売却を希望することが多く、このような場合の交渉は簡単ではありません。

また、最近では、自宅取得時にペアローンで不動産を共有する夫婦も増えており、この関係を解消できないまま離婚する事例もみられます。

当事務所では、離婚後に残された共有不動産の問題にも対応しております。

「自分の場合はどうなるのか?」「損をしないか不安だ」という方は、ぜひ一度、弁護士にご相談ください。

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年金分割

年金分割とは、婚姻期間中に夫婦が支払った年金の記録を分ける制度です。厚生年金などが対象で、国民年金は対象外です。

年金分割の仕組み ~何を分割するのか?~

年金分割は将来受け取る「年金の金額そのもの」を分けるのではありません。

正確には、婚姻期間中の「厚生年金の納付実績(標準報酬額)」を分け合う制度です。

夫婦が共同生活の中で同じだけの保険料を納めていたものとみなし、将来の受給額に反映させるのが目的です。

対象となる年金

いわゆる「2階部分」と呼ばれる厚生年金(共済年金)が対象です。

したがって、分割される側(多くは夫)が自営業などの「第1号被保険者」で、国民年金のみに加入している場合、分けるべき「2階部分」がないため、年金分割を請求することはできません。

年金分割の手続と期限

年金分割は、離婚届を出せば自動的に行われるものではありません。以下のステップを踏む必要があります。

分割割合(按分割合)の決定

まずは夫婦の話し合いで決めます。合意ができなければ、家庭裁判所へ調停や審判を申し立てて決定することになります。

年金事務所での請求手続き

割合が決まった後、年金事務所へ必要書類を提出して請求を行うことで、手続きが完了します。

期限に注意!

現行法では、請求期限は「離婚成立から2年以内」です。

今後は5年以内に延長される見込みですが、現状は2年を過ぎると手続きができなくなりますので注意が必要です。

厚生年金の納付実績の確認方法

婚姻期間中の厚生年金の納付実績は、「年金分割のための情報通知書」で確認できます。

年金分割の手続にも「年金分割のための情報通知書」が必要です。

取得方法

年金事務所に請求して取り寄せます。

所要時間

手元に届くまで1カ月以上かかる場合もあります。

準備のタイミング

弁護士への相談初期に必ずしも用意しておく必要はありません。協議が進んだ段階で弁護士から取得の案内をいたします。

取得に時間がかかることを見越し、離婚が現実的になってきた段階で日本年金機構のサイトを確認するなど、余裕を持って動けるよう意識しておくとスムーズです。

年金分割に関する弁護士のサポート

年金分割は、老後の生活を支える大切な権利です。

夫が「分割に応じない」と言っている場合や、手続の仕方が不安な場合は、期限が過ぎてしまう前に一度ご相談ください。

当事務所では、公平に年金分割ができるよう交渉や手続をサポートします。

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